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2015
01.26

[1/26] 冒険者のお仕事【起】

Category: 小話
 いつぞや予告して放置してた小話です。なんとか前編第1部(?)が書けたので勢いでUP。
 無 駄 に 長いです。本当にすみません。習作という名の言い訳。
 というか、たぶん、この「グダグダ」を書きたかったんだと思います…自分。

 次、真面目に書くときは、もうちょっとスッキリと書きたいです(決意)。

 (参考情報)主な登場人物は、サイナス、エンリッジ、フィル。
 四伝ではなく、PQ(Personal Quest)っぽい世界。
 

---

 夏もようやく終わりに近付いた頃の、とある晴れた日。
 サイナスとエンリッジは、森の中の小さな村営キャンプ場に来ていた。二人は、キャンプ場の管理人から、キャンプ場内マップと差し入れの缶ビールを受け取り、マップを片手に森の中の小道を歩いた。やがて、二人の目の前に、赤い屋根の小さな平屋建てのログハウスが現れた。明るい色の丸太を横に積み上げて作ってある、かわいい感じのログハウスだった。二人は扉を開けて、さっそく中に上がり込んだ。
 荷物を床に投げ出し、備え付けのテーブルの上に冷えた350mLの缶ビールを二本置く。エンリッジは自分のリュックをゴソゴソと探って、ポテトチップス(のり塩味)の大袋を取り出した。
「お、ツマミ持ってきてくれたんだな。ツマミは俺も持ってきてるんだが、今は温存しとくか」
「夜は長いからなー」
 言いながらエンリッジは、ポテチの大袋を背中側から開けてテーブルの上に広げた。サイナスはさっそく自分の分の缶ビールを開けて口をつけていた。
「しっかし、まさかお前とこうやって、サシで飲むことになろうとはな」
「ん? そんなに意外か?」
 サイナスの言葉に、エンリッジは意外そうに首を傾げた。
「だって俺とお前の関係って、ただの友人の友人だろ。フィルが居なかったら接点なかっただろ、俺たち」
「まあ、確かに知り合ったきっかけはフィルだけど。俺は会う前からフィルに聞いて知ってたからな。リネッタの兄貴だって」
「ああー……。アカデミーでは妹のリネッタが大変お世話になったようで」
 多少の嫌味を込めてサイナスは言ったのだが、エンリッジは「いやー」と照れて、清々しい笑顔をサイナスに向けた。
「いっやあ、お世話だなんて。リネッタにはむしろ俺の方が色々と世話になってたなあ。主に宿題見せてもらったり、ノート見せてもらったり、テストのヤマを教えてもらったり、居眠りしてたのを起こしてもらったり、後はえーっとなんだっけ」
「……もういい(俺が言いたかったのはそこじゃない)」
 サイナスはむすっと不機嫌な顔になって、ビールを一気にあおった。

 *

 二人は当然、仲良くバンガローでサシ飲みするためにここに来たわけでは無かった。そして、初めから「二人で」ここに来るつもりでもなかった。本来なら、ここには二人の共通の友人であるフィルも来ているはずだった。しかし、約束の時間になっても、フィルはキャンプ場に現れなかった。二人はしばらくキャンプ場の入口で待っていたのだが、管理人がやって来て、フィルから伝書鳥が届いたと教えてくれた。出かけるときにトラブルがあって少し遅れる申し訳ないという内容だった。
「珍しいな、フィルが遅刻するなんて。フィルは割と時間にはきっちりしているほうなのに」
 エンリッジが言うと、サイナスもうなずいて、
「確かに。だが『フィルがトラブルに遭う』ってのは、そんなに珍しいことでもないな」
「はははっ。それは言えてるな。フィルのやつ、今日は一体どんなトラブルに巻き込まれたんだろうな」
「後で洗いざらい吐かせないとなあ。くっくっく……」
 二人は愉快そうに笑いあった。真っ昼間っからすっかり出来上がりかけていた。
「……っと。あんまいつまでも楽しく飲んでるわけにはいかないか。そろそろお仕事モードに入らんと」
 はっと我に返ったサイナスが急に真面目な顔になって、エンリッジに言った。
「あ……仕事……。そうか。仕事あったんだっけ」
 ポテトチップスをパリパリとかじっていたエンリッジがボソリと呟くと、
「おいっ忘れんなよここに来た理由。まさか楽しくキャンプしにキャンプ場《ここ》に来たわけじゃあないよなあ?」
 サイナスがものすごい形相で迫ってきたので、エンリッジは少し焦って右手をひらひらと振った。
「いやっ、大丈夫大丈夫。忘れてない忘れてない」
「俺だってなあ一応『お仕事』ってことで精一杯自重したんだからな! 持ち物は必要最低限に絞ったし! 本当だったら旅のしおりを作って野外料理のレシピを載せたり皆で楽しく買い出しに出かけて小麦粉を大量に買い込んだりしたかったんだからな!」
「わ……わかったよサイナス。なんかスマン……(小麦粉?)」
「……まあ良い。お前に当たったって仕方ないし」
 サイナスはふう、と息をついた。
「なんかフィルがやって来る気配もないし、とりあえず先に始めとくか」
「ビールを?」
「じゃなくて、任務遂行のための作戦会議を(ビールはもう終わっただろ)」
 バンガローの内部の壁には、ミーティング用の大きめの黒板が取り付けられていた。サイナスは黄色いチョークを手にして黒板の前に立った。
「さて。俺たちが今いるバンガローがここ……『かけす』で、今回のターゲットがここ……『むささび』だ」
 サイナスは場内マップを見ながら、黒板にいくつかの下手くそな図形を描いていった。
「その『むささび』ってバンガローに魔物が棲み着いちまったって話だっけ」
「ああ。夜な夜な宴会を開いて盛り上がってて非っ常に近所迷惑らしい」
 数日前のことだった。冒険者たちが集う宿『SHINING OASIS』に、冒険者向けのお仕事――依頼が飛び込んできたのだった。依頼人は、村営キャンプ場の管理人。宿屋の女将《おかみ》ユーリアは、依頼に対し、「生きの良いヤロー三人くらいでいっか」と、適当に選抜した冒険者三名をキャンプ場に派遣した。その三人が、サイナスとエンリッジ、そしてフィルだった。
 せっかくミーティング用の黒板があるんだし、と、サイナスは依頼の詳細について黒板に書きこんでいった。

 *

・依頼人:村営キャンプ場の管理人
・依頼の内容:キャンプ場に棲み着いてしまった魔物たちの退治

・いつ:数週間前から
・どこで:キャンプ場のバンガロー『むささび』
・誰が:魔物『テナガケンエン』
  頭は犬、身体は毛深いサルの魔物
  体長2~3m?
  体格が良い、動きは俊敏
  腕が長い、肉球ぷにぷに
  耳が垂れている、鼻がしめっている
  温泉と日本酒が好き
  目が合うと襲いかかってくる
  引っかいたり噛みついたりしてくる
・どうした:ここが気に入ってしまったらしく住み着いてしまった
  昼間はバンガローに居ない(おそらく『村随一の名勝・秘境の絶景露天風呂』に浸かりに行ってる)
  夜になるとバンガローに帰ってくる
  毎晩宴会を開いて盛り上がってて非常に近所迷惑
  酒は人里の酒屋や酒場から盗んできている(人里で目撃情報有り)

 *

 黒板にチョークで迷いなくカッカッと書きこんでいくサイナスを、エンリッジは素直に感心しながら眺めていたのだが、
「秘境の……絶景……露天……風呂……」
「……やはりお前もそのワードに反応したか……」
 思わず声が出たエンリッジに、サイナスはわかる、わかるぜ……と何度も深くうなずいた。
「こんなチンケな……もとい、さびれ、いや、静かな村営キャンプ場にそんな絶景温泉があったとはな……。しかし、あまりに秘境で知る人ぞ知るとか何とかはぐらかされて場所教えてもらえなかったんだよちくしょう」
「何ー?! そんなに絶景で秘境なのか! そう言われるとますます行ってみたくなるな」
「ま、もしかしたら、『今は』魔物が棲みついてて危ないってんで教えてくれなかったのかもしれないけどな」
「なるほど。じゃあ、魔物を退治したあかつきには……!」
「ああ……! 仕事の疲れがその場で癒せそうだよなあ……! よーし頑張ってちゃっちゃとお仕事終わらせて秘境の場所無理にでも聞き出して温泉浸かって帰ろう。うん、やる気出てきた」
 と、二人がやる気を出したところで、そういえば、とサイナスはエンリッジに声をかけた。
「今回のお仕事は久々の『冒険者』っぽい仕事なわけだが。魔物相手の『お仕事』なら、俺とフィルはそこそこやれると思うんだが、」
 サイナスは部屋の隅っこに置かれた、自分の愛用の両手斧《バトルアクス》を見ながら言った。
「お前って、戦えるんだっけ? それとも普通に救護要員?」
「俺は……あんま前線で戦ったりはしないかなー」
 と、エンリッジは答えた。
「後方支援っていうか。サポートっつーか。あんま戦力として期待しないほうが良いと思う」
「でもお前、なんか箱入りの武器っぽいの持ってきてたよな」
「ああ、これ?」
 エンリッジは、その頑丈そうな黒い箱の留め金を外して開けた。中から、小型の銃のようなものを取り出して、
「これ、ピストル型の麻酔銃な。俺、一応、けっこうヤバイ系の薬扱えるからさ。これでしびれ薬を撃ち出して、対象を動けなくしてやる、と」
「……なんだよそれめちゃくちゃ有効じゃんか」
 サイナスは目を輝かせた。
「相手を動けなくできるんならラクなお仕事になりそうだな。無抵抗の相手をサクッと……」
「あれ、お前ってこーゆーの有りなのか? 騎士道精神に反するとか何とかで好まないかと思ってたんだけど」
 エンリッジが少し意外そうに言うと、
「いやそんなことはない」
 サイナスはきっぱりと否定した。
「できるだけラクして勝つが俺の信条だぜ。つーか、薬物使用が有りだってんなら、もっとこう、戦わずに勝つ!とかできねーかなあ」
「なるほど。ラクして勝つは俺も賛成。あれ。俺たち意外と気が合う? もしかして」
「……魔物の情報や昼夜の行動パターンは割れてるわけだから……んーー……」
 サイナスが腕を組んで唸っていると、バンガローの外から、何かがこちらに駆け足で向かってくるような足音が聞こえてきた。そして、バンッ!と音を立てて、勢い良く扉が開け放たれた。
「ぜえっ……ぜえっ……」
 入り口に立った男は、しばらく息を切らせていたが、
「おっ……遅くなって……ほんっとーに、すまないーーっ……!」
 と叫んで、その場に土下座でもしそうな勢いでへたりこんでしまった。
「「フィル」」
 サイナスとエンリッジは同時に彼の名を呼んで、彼――フィルを見た。紺色のイニシャル入り野球帽に、ださいロゴマーク入りのTシャツ、左肩にスポーツバッグをかけて、右手にはしっかりと350mLの缶ビールを握っていた。背中には身長ほどの長さの、布に包まれたおそらく彼の武器《エモノ》を背負っていた。
「まあ、とりあえず上がれや。まずは駆けつけ一杯」
 サイナスがフィルを中に招き入れ、
「悪い……俺たち、先に乾杯しちまって、ツマミのポテチも食べきっちまった……」
 エンリッジが申し訳なさそうに言った。
「あっでもサイナスが柿ピー出してくれるってさ」
「勝手に決めるな!」
 すかさずサイナスがエンリッジをどつく。フィルは吹き出した。
「なんだよ、二人とも、もうどつき漫才やれる仲になっちまったのか」
「いや別に。……俺が持ってきたのは柿ピーじゃねーし。チー鱈だし」
「別に何でも良いよ。つーかほんとに、遅れて悪かった……」
「良いって。貸し一つな」
 サイナスはニヤリと笑った。
「……サイナスの貸しは高くつきそうな貸しだな」
「それに、何か楽しい話、聞かせてくれるんだろ?」
 サイナスは相変わらずニヤニヤと悪い顔で笑っている。
「楽しい話?」
「どうして遅れたのか白状してくれれば、それが自動的に楽しい話になるから」
「サイナスは俺のことを何だと思ってるんだ……」
 フィルは盛大にため息をついた。
「はあ。まあ、別に減るもんでもないし普通に話すけど。けどあんま楽しい話でもないぜ? それでも良ければ」
「いーっていーって。例え外したとしても気にすんな」
 エンリッジがニコニコしながら言ってくれた。
「だーかーらー。良くわからないけど期待に満ちた目で俺を見つめるのはやめてくれ!」
 フィルは天井を仰いで叫んだ。

 *

「俺の弟のリィルが……」
 と、フィルが口を開くと、あれっ?という顔をして、サイナスとエンリッジが顔を見合わせていた。それに「あれっ?」と思いながらも、フィルは事実を淡々と語った。
「俺の久しぶりのまともなお仕事を祝して、とかなんとか言って、出かける俺のために弁当を作ってくれたんだけど。この弁当が、俺を実験台にしようとしているとしか思えない出来(察してくれ)で。見栄えと香りからしてもうヤバイものが漂い溢れ出てきているわけで。あれはマジでこの世に出してはいけないものだった。でも本人(リィル)は、旅立つ兄貴のために早起きして本気出したんだって主張してくるんだけど信じられねえ。ってんで朝から大喧嘩さ……めちゃくちゃこじれた。後始末に時間もかかった。以上。……遅刻して悪かった」
「「…………」」
「…………やっぱ、俺が悪かった……かな。うんリィルは普通に良い弟だもんな……。今まで、リィルから悪意を向けられたことなんて一度もなかったもんな……」
「「…………」」
「……あのー。何かリアクションとか無いと、ちょっとつらいんですけど……」
「あー。うん。ちょっと意外だったなー、って思って」
 エンリッジが口を開くと、サイナスもうんうんとうなずいた。
「? 意外って何が?」
「俺、ぜってーエルザ姉さんがらみだと思ってた」
 サイナスが言うと、そう、それ!とエンリッジも大いに同意した。
「二人とも俺の姉貴のことを何だと……まあ、確かにトラブルメーカだけどさ。幸いなことに、今、エルザとは同居してないんだよ。結婚して家出てるから。まあ、時々予告無く里帰ってきたりもするけど」
「そしてトラブルの種を蒔いていくのか」
「そう」
 サイナスにフィルがうなずいて、エンリッジが、そうか、お疲れ……と、チー鱈の袋をフィルに差し出した。
「さて……」
 サイナスが、チー鱈の袋を奪い返しながら口を開いた。
「ちょっと盛大に脱線しちまったが。そろそろ本題に戻ろう。フィル、俺たち今まで魔物退治の依頼について話し合ってたんだ」
「あ、うん。この黒板な。ざっと目は通した。あっ秘境の絶景露天風呂って良いな」
「そして結論が出た。『ラクして勝つために、薬物を有効活用しよう』と」
「?! 黒板に書いてないけど?」
「今から書くから。で、俺がちょっと作戦の叩き台を考えてみた。お前らの意見も聞かせて欲しい」
「「おお」」
 フィルとエンリッジは声を上げてうなずいた。サイナスは楽しそうに作戦について語り始め……
 ――話が進むにつれ、何故か、フィルの顔は青ざめていくのだった。

(続く)
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