--
--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2016
04.19

[4/19] 冒険者のお仕事【転その2】

Category: 小話
 【転その1】の続きです。
 

---

 結局。
 何が何だかよくわからないまま、フィル、サイナス、エンリッジの三人は、バンガローのフローリングの床に並んで正座して、隻眼のケンエンのお説教を聞く羽目になってしまった。「立ち話もなんだしねっ☆」ということで、隻眼のオネエケンエンも、床によいしょっと腰を下ろして胡座《あぐら》をかいた。フィル、サイナス、エンリッジの三人には、子分ケンエンたちから、ミニサイズの缶入りウーロン茶がふるまわれた。三人はありがたく受け取った。
「さっそくだけどねん、この赤ワイン、」
 オネエケンエンは、床から、割れた大瓶の欠片のひとつを拾い上げて、三人の目の前に掲げた。
「このラベル――、これ、『スーパー☆トリプル☆スター☆ワイン』ってブランドのものでしょん? あそこのワインは安物の粗悪品だって有名なのよん。知らなかったのん?」
「……知らなかったのか、サイナス?」
「ぐっ……責任を全て俺に押しつける気だな……」
 サイナスは恨めしそうにフィルを見た。
「確かに飲めればいーやって感じの若者向けの廉価ワインだけど……。ごめんなさいすみませんでしたこれ買ってきたの俺です俺の責任です」(棒読み)
 サイナスが頭を下げると、
「でも、貧乏学生にとっては安くて気軽に買えるからありがたいし、このワインでも結構盛り上がれるものなんだぜ」
 横からエンリッジがフォローを入れてくれた。
「それにしても、お姐さん、随分とワイン事情に詳しいんだなあ」
「うふふ。そりゃあだって、ねぇ~ん」
 オネエケンエンが意味深な笑みを浮かべると、
「ねえさんはすごいんだぞケン」
「ねえさんはわいんそむりえこんくーるでじゅんゆうしょうしたんだぞケン」
 オネエケンエンの背後から、次々と、子分たちが誇らしげに言った。
「へえ。どおりで」
 エンリッジは素直に感心した。フィルは、ケンエンたちが開催するワインコンクールにちょっと興味を持った。
「……というわけで。俺謝ったし、もう説教はいいか? 割れたワイン瓶は回収するから帰っていいか?」
 言いながらサイナスはもう立ち上がりかけていた。
「え、サイナス、もう撤収するのか?」
 女装して冷や汗もいっぱいかいたのに俺の苦労って一体……と、フィルは少し空しくなった。
「だってここからこの事態をどう収集つけろってんだよ……。いったん撤収して出直そうぜ」
 サイナスは小声でフィルに囁《ささや》いた。
「出直し? ってことは、」
「ああ。作戦変更だ。っつうかぶっちゃけ、作戦失敗だ」
「うっ……ゴメン、俺の、所為だよな……」
「いや、俺の読み違いだよ。まさかケンエンたちの中にワインに詳しいヤツが居て説教食らうとはな」
「それより何より、こうやってケンエンたちと普通に会話が成立すること事態がちょっと想定外っていうか」
 エンリッジも言った。
「確かに……。俺も、ヤツらとこうして話してみるまでは、ただの討伐対象モンスターとしか思ってなかったし……」
 フィルは、子分ケンエンたちからふるまわれたウーロン茶のミニ缶を見ながら言った。
「…………」
「…………」
 サイナスもエンリッジも、何となく黙り込んでしまった。
「……なあ、サイナス、」
 フィルが口を開いた。
「……皆まで言うなフィル」
「俺たち、出直したとしたって、改めてこいつらを討てるのかな……?」
「…………」
「確かにこいつら、自分勝手で迷惑なヤツらだけど、討ち取るほどのことかっていうか……」
「……じゃあ、どうしろってんだよ」
「うーん、それは……」
 サイナスに真剣な表情で見つめられて、フィルは言葉に詰まった。
「話し合いで解決、できねーかな」
 ぼそりと、エンリッジが呟いた。
「はなしあい?」
 フィルが尋ね返すと、
「ああ、だって、普通に話が通じそうじゃんこいつら。バンガローの不当な独占とか、真夜中の迷惑行為とか、案外、悪気なくやってるだけかもしれないし。話せばわかってくれるかも」
「ふむ」
 サイナスはぽん、と手を打って、大きくうなずいた。
「ダメもとでやってみる価値はあるな、それ」
「だろー?」
 エンリッジは笑顔になって、サイナスに頭を下げた。
「というわけで、サイナス先生、お願いします」
「は?」
「あ、俺からもお願いします、サイナス先生」
 続いてフィルも頭を下げた。
「は?」
「「お願いします」」
「…………」
 サイナスは天井を仰いで、はあ、とため息をついた。
「……ま、こういった交渉ごとは、お前らに任せるより、俺がやったほうが、成功率は高いんだろうな……客観的に考えて」
「おお先生、頼もしいお言葉」
「フッ……。昔っから頼られちゃあ放っておけない性格でな……。ま、やれるだけやってみるさ」
 サイナスはまんざらでもない表情になって、改めてオネエケンエンと向き合うのだった。
関連記事
トラックバックURL
http://pqjp.blog.fc2.com/tb.php/286-2a49ee7c
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。